量子力学 演算子の行列表示(3) 固有値と固有状態を行列を使って求める
今回は、演算子の行列表示に関する説明の続きを行います。
前回までの記事はこちら。
復習
数式群(A)
前回の議論では、演算子B(ハット)の固有値と固有状態を求めるためには、(3)の行列の固有値問題を解けばよいことを示した。
(3)を解いて固有値と固有状態を求める方法
(A-3)の固有値(Bの固有値)と固有ベクトルの求め方
数式群(B)
(Aー3)は(1)のように変形できる。(Iは単位行列)。
固有ベクトルがゼロベクトルでないことより、(2)の式が満たされなければならない。(逆行列が存在してしまうと固有ベクトルがゼロベクトルになってしまうため。)
(2)の式から、固有値を求めることが出来る。
そこで求めた固有値を(1)に代入して、連立方程式を解くことで、固有ベクトルを求める事が出来る。(固有ベクトルは規格化しておく)。
Bの固有状態の求め方
数式群(C)
(1)は定義。上のほうで説明したやり方で求めた正規直交化された固有ベクトルを代入することで、Uを求めることが出来る。
また、(A-3)から、(2)が成り立つことが分かる。
(2)を書き換えると、(3)のようになる。
ここで、固有ベクトルが正規直交系であることと固有ベクトルを並べた行列がユニタリー行列であるという事実を用いると、Uの逆行列はU(ダガー)で求められる。(4)
ここで、(3)は、固有値を対角成分にもつ対角行列である。従って、B(D)はB表示をとったときの行列Bである。
つまり、(3)のようにして、行列BをA表示からB表示に変えることが出来ている。
数式群(D)
(1)は前回の記事、「量子力学 演算子の行列表示(2)」を参照。
(2)は、(1)をUを使って書き換えたものである。このように、Uを使えば、Aの正規直交化された固有状態から、Bの正規直交化された固有状態に変換することが出来る。
(C-3)、(D-2)のように、Uが求まれば、演算子B(ハット)に対応する行列B(太字)をA表示からB表示に変える方法が分かり、また、Aの正規直交かされた固有状態からBの正規直交化された固有状態を求めることが出来るのだ。
(B表示の行列Bに関しては固有値を対角成分に並べただけなので(B-2)を解いて求めた固有値を対角成分に並べるだけでB表示の行列Bは求まるが)
まとめ
演算子B(ハット)の固有値の求め方
固有値は(B-2)を使って求める。
演算子B(ハット)の固有状態の求め方
(B-1)に上で求めた固有値を代入することで、正規直交化された固有ベクトルcを求め、それからUが求まる。
そうして求めたUを(D-2)に代入することで、演算子A(ハット)の正規直交化された固有状態から、演算子Bの正規直交化された固有状態をを求めることが出来る。
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