ディラック方程式を共変形式っぽい形に直す
つまり、相対論の観点からすると、ディラック方程式は、ローレンツ変換に対して形をかえない式として表すことができるはずである。
「ディラック方程式がローレンツ変換にたいして形を変えない(共変形式)」という要求に従って、二つの慣性系から見たスピノル同士の変換則が要求されることになる。
1.ディラック方程式を、共変形式っぽい形に直す
2.共変形式っぽい形が本当に共変形式であるようなスピノルの変換則がひとつだけ見つかる
の順番で、二つの慣性系からみたスピノル同士の変換則が導かれる。(そのスピノルの変換則は、四元ベクトルの変換則(座標同士のローレンツ変換と一緒)とは異なるということが計算で導かれる)
その過程において、今回は、「1.ディラック方程式を共変形式っぽい形に直す」ということに関して説明していきたいと思う。
ディラック方程式を共変形式っぽい形に直す
数式群(A)
ここで、α、βなどは、(2)、(3)である。
(4)は(1)の両辺にβをかけたもの。
(4)において、(5)としてディラック表示でのガンマ行列とよばれるものを導入し、β^2=1を用いると、
(6)の式になる。((1)から(6)の式が導かれる)
また、逆に、(6)の式にβをかけると、(7)になり、(1)の式が導かれる。
((6)から(1)の式が導かれる)
つまり、(1)から(6)の式が導け、(6)から(1)の式が導けるという事は、(8)のように、(1)と(6)は同値であるということになる。
(8)は共変形式っぽい見た目をしている。
(8)が実際に共変形式であるためには、あるスピノルの変換則が要求されることになる。その計算は今回は触れないが、計算で導かれたスピノルの変換則は、四元ベクトルの変換則と異なるという結果になる。
ここで、ガンマ行列はローレンツ変換のもとで変わらない。特殊相対性理論における、「物理法則はローレンツ変換のもとで形を変えない方程式になる」という仮定は、「時間や空間、電場や磁場などの物理的な量がローレンツ変換のもとで形を変えても、物理法則の形が変わらないように式を書くことができる」ということである。変換されるのは、あくまで物理的な量である。物理的な状態である、ψなどがローレンツ変換のもとで変換されるのは分かるが、ローレンツ変換のもとで、(8)の方程式の係数であるガンマ行列が変わってしまうと、それは、方程式そのものの形が変わってしまった、ということになってしまう。
従って、ガンマ行列に関してはローレンツ変換のもとで形を変えないことが最初から要求される。
今回の記事はこれで終わりです。
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