ディラック方程式が確率保存則の問題を解決する
今回は、ディラック方程式が、クライン・ゴルドン方程式での負の確率密度の問題を解決することについて説明します。
スピノル
数式群(A)
(1)はn=4のディラック方程式(スピン1/2のフェルミオンを記述するディラック方程式。)(αx、αy、αz、βは4行4列の行列)
(1)において、αx、αy、αz、βは4行4列の行列なので、ψは4行〇〇列にならなければならないが、確率密度を(2)のように拡張することを考えると、確率密度はスカラーにならなければいけないため、(3)のようにψは4行1列で表されることになる。
(3)をスピノルという。
ディラック方程式が確率保存則の問題を解決する
クライン・ゴルドン方程式では、確率保存則の式を作ろうとすると、確率密度が負の値もとりうることになってしまうという問題がある。
クライン・ゴルドン方程式の導出はこちら。
しかし、ディラック方程式はクライン・ゴルドン方程式の確率保存則の問題を解決する。
数式群(B)
(1)と(2)は(A-1)のディラック方程式より。
(3)は(A-2)で拡張した確率密度の時間偏微分を、(1)と(2)にもとづいて計算したもの。
(4)のように新たに確率流密度を定義すれば、(3)から、(5)の確率保存則を作ることが出来る。
ここで、確率密度は、(A-2)より、0以上になっており、クライン・ゴルドン方程式で確率保存則を作った時の、確率密度が負になってしまう問題は解決された。
今回の記事はこれで終わりです。
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