物理人、世界を語る

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物理・数学の美しい方程式を一挙に紹介

高校で数学物理を履修しただけの人でも分かりやすいように、かつできるだけ正確に書いたつもりです。高校生でも読めると思います。(文章中に数式を少しだけ書きましたがスマホだと数式が変換されず見れない可能性があります。ご了承ください。)

 

いろいろ書いてたら楽しくなっちゃって結構長く書きました。3回くらい読めば大まかに大学物理での最も重要な部分が分かるのではないかと思います。

 

 

オイラーの公式 

$i$というのは高校で数学をやった人ならわかるかもしれませんが、虚数単位というものです。虚数単位は二乗すると$-1$になる数です。

そんな奇妙な数字をなぜ作るのかというと、計算が楽になる場合が多いからです。計算が楽になるというのはなかなか実体験しないとわかりづらいかもしれません。量子力学という学問以外でこの虚数を使う場合は、虚数を使わなくてもその理論を構築することが可能です。量子力学以外と書きましたが、この話は後述します。)

オイラーの公式には、式にもあるように、虚数乗というものが出てきています。こんな奇妙なことがあっていいのでしょうか。よく、オイラーの公式は世界で最も美しい等式だなんていわれることもあります。こんな言葉を聞くと、「オイラーの公式は世界の真理なのかな。。」なんて思うかもしれませんが、私はそこまでそうは思いません。

なぜなら、複素関数論という学問において虚数乗というものは人間が定義したものであるからです。真理といえるほどのものではないと思います。しかし、その定義は微分可能性という観点から見て極めて自然な定義になっています。微分可能という概念ももちろん人間が定義したものではあるのですが、元をたどるとどんどん直感的にわかりやすい概念になっていきます。そう考えると、真理といってしまう気持ちも少しは分かります。

ただ、オイラーの公式の右辺だけを例えば5倍してそれを新・オイラーの公式として採用したとしたら、物理計算の際に今までは$e^{i \theta}$が出てきていた部分が全部$e^{i \theta}/5$になるだけです。ただ、そういう事をするととても面倒なことになってしまうと個人的に思います。

$i$という奇妙な数字を考えるのは計算が楽になるからだ、という話をしました。しかし、量子力学という物理の学問ではこの虚数が物理的に大きな役割を果たすことになります。虚数を使わないと量子力学の世界をうまく記述できないのです。具体的には、波動関数という関数で物体のある点での存在確率などを記述することになるのですが、その波動関数虚数が現れるのです。

 

虚数を使わずに量子力学を記述するという試みがあったという話を知恵袋で目にしたことがあります。それが成功していて正しいとすれば、虚数は単なる計算の道具に過ぎないのかもしれません。しかし、私自身本の中でそのように量子力学を構成している本は見たことがありませんし、多くの本の中でも虚数量子力学の中で本質的な役割を果たしていると書かれているので、この文章の中ではそれを受け入れることにします。

 

ニュートン運動方程式

高校物理でも習う事だと思います。物体の加速度は力に比例し、質量に反比例するというものです。しかし、この式は物理の世界においては厳密には正しくありません。相対性理論で導かれる測地線方程式とアインシュタイン方程式に基づく物体の運動が本当は正しいと考えられています。ここで考えられているといったのは、現在量子力学という学問と相対性理論は統合が上手くできておらず、相対性理論が間違っているという可能性も残されているからです。相対性理論が間違っているかどうかは私にはわかりません。

 

オイラーラグランジュ方程式

\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_k}-\frac{\partial L}{\partial q_k}=Q_k \tag{5}

解析力学というニュートン力学と同じ内容を別の形で定式化する学問があります。

これはその学問に出てくる式で、ニュートン運動方程式と等価な式です。解析力学では物体の運動に関して最初の状態と最後の状態を指定すると、その間のあらゆる軌道のうち作用とよばれるものを最小にする運動が実際に実現されるという形で運動を定式化しています。(これはハミルトンの原理、別名最小作用の原理と呼ばれます。)

解析力学ではなんでわざわざニュートン力学と全く同じことを別の形で表現しようとするのでしょうか。それは、同じことでもいろんな形で表現してみると、見えてくることが増えるからです。量子力学相対性理論の世界でも、この解析力学の形で理論を記述する方法があります。特に量子力学において交換関係と呼ばれるものは、解析力学におけるポアソンの括弧式と関連があります。また、ファインマンという物理学者が編み出した経路積分という量子力学の計算方法も、解析力学の考え方をもとにしています。このように、もし出来るのなら、色んな表現方法を編み出したいというのは誰でも思うのではないでしょうか。何か大発見に繋がるかもしれないのですから。

 

マクスウェルの方程式

B ( t , x ) = 0 × E ( t , x ) + B ( t , x ) t = 0 D ( t , x ) = ρ ( t , x ) × H ( t , x ) D ( t , x ) t = j ( t , x ) {\displaystyle {\begin{cases}\nabla \cdot {\boldsymbol {B}}(t,{\boldsymbol {x}})&=0\\\nabla \times {\boldsymbol {E}}(t,{\boldsymbol {x}})+{\dfrac {\partial {\boldsymbol {B}}(t,{\boldsymbol {x}})}{\partial t}}&=0\\\nabla \cdot {\boldsymbol {D}}(t,{\boldsymbol {x}})&=\rho (t,{\boldsymbol {x}})\\\nabla \times {\boldsymbol {H}}(t,{\boldsymbol {x}})-{\dfrac {\partial {\boldsymbol {D}}(t,{\boldsymbol {x}})}{\partial t}}&={\boldsymbol {j}}(t,{\boldsymbol {x}})\end{cases}}}

電磁気学におけるもっとも重要な式といってもいいものです。

この4つの式は電磁気現象の基礎方程式となっています。この4つの式からすべて(私が知っている中では)の電磁気現象を説明することが出来ます。

この4つの式から、電磁波の波動方程式

を導くことが出来、この方程式から導かれる電磁波の速さが光の速さと一致することが分かり、光が電磁波であることの決定的な証拠になっています。

 

ローレンツ変換

上式で

ローレンツ変換特殊相対性理論で導かれる座標変換(動いている人や止まっている人、回転している人によってどのように物体の見え方や時間の進み方が変わるのかを記述したもの)です。

この式は、動いている人と止まっている人で時間が進む速さが違ったり、モノのながさが違って見えることを示しています。(この式はx方向に動く場合の式です)

ここで、動いているとか止まっているとかいうのは、相対的な速さのことです。絶対的に止まっているとかいう状態はこの世に存在しないというのが相対性理論における基本仮定です。

また、この変換のもとで、どんな人から見ても光の速さは一定であるという事も導かれます。本当は、この変換から導かれるというよりも、先ほどの仮定と、どんな人から見ても光の速さが一定であるという仮定の下にこのローレンツ変換が導かれることになります。

 

2 B μ ϵ 2 B t 2 = 0 {\displaystyle \nabla ^{2}{\boldsymbol {B}}-\mu \epsilon {\frac {\partial ^{2}{\boldsymbol {B}}}{\partial t^{2}}}=0} 

測地線方程式

x ( τ ) {\displaystyle x(

d 2 x μ d τ 2 + Γ μ α β d x α d τ d x β d τ = 0 {\displaystyle {\frac {d^{2}x^{\mu }}{d\tau ^{2}}}+\Gamma ^{\mu }{}_{\alpha \beta }{\frac {dx^{\alpha }}{d\tau }}{\frac {dx^{\beta }}{d\tau }}=0}

一般相対性理論における式です。

一般相対性理論では時空が微分なリーマン多様体であることを仮定しています。

微分なリーマン多様体の中には、平坦なものもあれば、平坦でないものもあります。(ここでいう平坦だとか平坦でないとかいうものは数学的な式で定義されているものです。)

平坦なものもそうでないものも、直線という概念は重要です。

測地線方程式は、可微分なリーマン多様体上においての出来る限りまっすぐな線を表す式(例えば赤道は地球の外から見ると地球の周りをまわる曲線だけど、赤道上に立って赤道を見てみると直線にしか見えないですよね)といえるものです。

一般相対性理論では時空が可微分なリーマン多様体であることを仮定しているので、もちろん物理現象もこの測地線方程式と関係しています。

具体的には、自由落下している粒子は時空の時間的測地線上を動くという形で関係しています。(ここはあまり気にしなくてもいいです)

 

アインシュタイン方程式

G μ ν + Λ g μ ν = κ T μ ν {\displaystyle G_{\mu \nu }+\Lambda g_{\mu \nu }=\kappa T_{\mu \nu }}

先ほど測地線方程式の話をした際に時空は可微分なリーマン多様体であるけれども多様体の中には平坦な多様体と平坦でない多様体があるという話をしました。

時空は基本的には平坦でない多様体です。一般相対性理論では重力場が時空を平坦じゃなくさせているという仮説を立てています。どのように重力場は時空の仕組みを変えてしまうのか、それを記述したのがこのアインシュタイン方程式です。

一般相対性理論において、重力はほかの力と一線を画している力です。

他の力は時空上で働く単なる力であるのに対し、重力は時空の仕組みそのものを変えてしまうのです。

また、現在でも未解決な物理の問題で、重力の概念をうまく量子力学という学問に取り込むことが出来ていないという問題があります。重力子という仮説上の素粒子も提案されていますが、現在でも未発見です。

このように、現在は、「物理学者は重力も他の力と同じ概念に取り込みたい」のに対し、「自然界で重力はほかの力と全然違うっぽい」という状況になっています。

 

※自然界には重力も含めて4つの力があり、物理学者はこの4つの力の統一を目指していますが、重力はその中でも統一が圧倒的に難しい力です。電弱統一理論として2つの力の統一はなされましたが、重力以外の3つの力だけですら統一が未完成です。

 

また、アインシュタイン方程式とドーンと書きましたが、アインシュタイン方程式も理論的に演繹的に導かれたものではなく、最後導く部分は論理にとびがあります。ただ、実験ときちんと一致しているので、正しいのではないかと考えられています。アインシュタイン方程式以外にも、時空の仕組みをどのように重力場が変えるのかという方程式は提案されています。しかし、審美的な観点からみても実験的な観点から見ても、アインシュタイン方程式が一番生き残っています。

 

※詳しくは知らないのですが、相対性理論と矛盾するといわれている実験結果もあると聞いたことがあります。大学で、「相対性理論を否定する論文も書くには書けるが、冷たい目で見られる可能性がある」という話を聞いたことがあります。

 

測地線方程式とアインシュタイン方程式の2本柱が一般相対性理論の基礎方程式となります。この2つの方程式を元に、今注目の重力波など、いろいろな計算をしていくことになります。

  

シュレディンガー方程式

 これは量子力学におけるとても基本的な式です。ニュートン力学からの洞察からこの式が導かれます。ニュートン力学におけるニュートン運動方程式のようなものです。つまり、これも相対論的な状況では満たされない、近似的な式です。ニュートン運動方程式のようなものといいましたが、「量子力学」と「ニュートン力学相対性理論のような普通の力学」というのは全然種類の違うものです。量子力学はミクロな世界での物体を記述する学問で、確率的にしか物理的な予測はできないという考えの学問です。このことはもちろん実験にもとづいており、正確に実験とも一致しています。また、量子力学という学問が不完全だから確率的にしか物理現象を予測できないのだ」という考えもありますが、これは一応ベルの不等式」とそれに対する実験結果によって否定されています。概要を言うと、「もし現実の物理現象が確率的でないとすると、ある実験に対しベルの不等式というものが成り立っていなければならないが、実験結果ではそれが成り立っていない」という状況になっています。

 

オイラーラグランジュ方程式の時に話をしましたが、同じことをいろんな形で表現すると見え方が広がります。量子力学においてもシュレディンガー方程式と同じ内容を別の形で表現する方法がいくつかあります。

一つはハイゼンベルク運動方程式と呼ばれるもので、次のような形をしています。

もう一つはファインマン経路積分というものがあるのですが、これに関しては詳しくないのであまり書きません。解析力学ニュートン運動方程式オイラーラグランジュ方程式に直した時と同様な考え方でシュレディンガー方程式を書きかえたものです。

私が知らないだけで他にもシュレディンガー方程式と等価な式があるのかもしれません。この二つが有名だと思います。

 

ディラック方程式

 重力がない状況で成り立つ量子力学の式です。すみません。ここのところはまだちょこっとしか勉強していないのであまり正確ではないかもしれませんが、特殊相対性理論(重力がないときの理論)の結果からの洞察でこの結果が導かれます。量子力学特殊相対性理論とは結び付いているけれども、一般相対性理論(重力がある時の理論)とは結び付けることが出来ていません。つまり、一般相対性理論の現象を量子力学で説明することが出来ていないのです。これ以上は、いろいろ話そうかなとも思ったけど、ディラック方程式に関してはあまり正確じゃないこと言ってもあれだし、ちょっと疲れてきたし、もうやめます。あとで付け足すかも。

 

 

こんなに長く書くつもりはなかったのですが、ぱっと思いつきで記事を書いたらいろいろ思い浮かんであれも言いたいこれも言いたいってなって相当長くなってしまいました。過去最高に長い文章です。でも、重要な事はしっかりきれいにまとめて言えたのではないかと思います。これを読み通せば概要は本当につかめると思うので、多くの人に読んでもらえたら嬉しいです。

 

 

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